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2020/09/30
着物のお直し例〜T様の場合〜

先日、着物のご相談をお受けしました。その時のお直しの例としてご紹介いたします。

 

お客様は遠方からのご依頼でしたので、全てメールでの写真のやり取りとお電話で、お直しをお引き受けました。(元々、私のお友達からのご紹介です)

まずはお写真をいただき、着物の汚れ、シミなど大体把握しました。(正直、なんとなくしかわかりませんでしたが)

お客様は着物を譲っていただいたようですが、シミが多くて着用に少し抵抗がおありの様子です。

私はまずは一度クリーニングをされることをお勧めしました。呉服屋さんでも「丸洗いクリーニング」の取り扱いがありますが、それをしてもらいました。

丸洗いクリーニングだけでは落ちないことは分かっておりましたが、お直しするにも、とりあえずはクリーニングが良いのではと思いました。

その後、弊社に商品を送っていただき、実際にシミや汚れを確認していきました。

所々黒い色移りみたいなものや黄変がありました。刺繍使っている糸、金彩に使う箔の色移りかもしれません。

 

思ったよりも広範囲にシミというのか黄変がありました。確かに着用には厳しい感じでした。

お客様のご予算と、私が見た印象の意見を合わせてお客様にお伝えしました。こういう時に私は自分だったら。。。と思いながらお答えしています。

今回は正直なところを何処まで言うか迷いましたが、お客様が受け入れてくれそうな感じでしたので、隠さずにお伝えしました。

着物の生地も薄く、染め加工もあまり良いとは言えない物でしたので、あまりお金を掛けるべきではないと思いお伝えしました。また「シミ抜き」というお直しが本来のやり方でしょうが、かなり費用がかかりそうでしたので、シミ抜き無しで、上から金彩で隠す方法をご提案しました。

修正後のイメージとして、写真を加工して、お客様にメールにてご提案しました。

オレンジ部分は金泥で、お花を増やしていく予定です。黄変がある所は霞のような金箔を撒くことをご提案し、この修正後のイメージ写真をお客様に見ていただきました。

(写真はお直し加工後の写真です↓)

 

 

この方法でしたら、根本的にシミを抜いたわけでもないので、後からまたシミが増えたり見えてくる可能性があることもお伝えしております。

 

お客様との会話の中で、ご縁でいただいた着物を着たいという強いお気持ちのようでしたが、どなたかに譲りたいといった感じではありませんでした。

私が見た感じ、生地の状態からして今後10年、良い状態保てる自信がなかったので、お直し後に3回以上着用したらよろしいのでは?くらいの感じで、加工代も安く上がるように工夫し、ご提案しました。

シミも落とさずに上から加工して隠すのは本筋ではないのでしょうが、お客様の価値観、私の価値観、着物に対する愛情などの「感情」と、現実問題である生地の状態や「費用」との折り合いで、決めていきました。

出来上がった着物をお送りしましたら、とても喜んでいただき、早速着用されたお写真を送っていただきました。

本当に私も嬉しかったです。着物が再生されて、着ていただいてこそ「着物」の意味があります!

T様が喜んでくださったのは勿論ですが、T様にこの着物を差し上げた方も喜んでくださったのではと思うと、私もとても嬉しいです。

着物を大事思う気持ち、いただいた着物を大切に着たいと思うT様の優しいお気持ちに、少しでもお手伝いできましたこと嬉しく思います。

着物って、よくわかりませんが、洋服とは違うんですよね。思い入れが。

なんでしょうね、これって。不思議です。いろんな意味で着物の力を感じます。

T様、この度はありがとうございました!

 

 

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